「統治行為論さんが風邪をひかないように免疫について書きます。」と書いてしまったので、書きます。
まず免疫とは
簡単に言うと、生物が自分の恒常性(homeostasis)を保つために抗原、つまり異物を排除するための仕組みです。
風邪ってなに
ライノウイルス(Rhinovirus)*1やコロナウイルス(Coronavirus)、アデノウイルスAdenovirusなどによって引き起こされる、鼻・咽喉を中心とした症状をはじめ頭痛や発熱などを伴う感染症です。上気道(鼻から喉にかけて)への感染が原因で、根本治療の薬というものはありませんが、イブプロフェンやアスピリンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で解熱・鎮痛・炎症の抑制を行うことで症状を抑えることができます。
対策
「統治行為論さんが風邪をひかないように」と書いてしまったので、統治行為論さんが風邪をひかないために統治行為論さんがするとよいことを考えます。
- 手洗いうがいでウイルスを除去する
- マスクでウイルスの粘膜への付着を防ぐ
- むやみに病人と同じ空間にいることを防ぐ
次に、統治行為論さんが風邪をひかないために我々がするとよいことを考えます。
- 祈る
- 統治行為論さんの目の前で咳やくしゃみをするのを防ぐ
1番目は大切なことです。神を持っていなくても、仏を持っていなくても、あなたの信ずる何かに、その日までの統治行為論さんの健康を感謝しその日からの統治行為論さんの健康を願いましょう。統治行為論さん以外の健康も感謝して願いましょう。
2番目も大事です。励行しましょう。
免疫メカニズム
皆さんお待ちかね、免疫がどう働くかのコーナーです。まずはcomponentとその役割から見ていきましょう。
免疫構成
大きく分けて、人間の免疫系は自然免疫系(innate immunity)と獲得免疫系(adaptive immunity)に分けられ、それぞれ主に骨髄由来の細胞とリンパ由来の細胞からなります。
自然免疫
まずは白血球から。
マクロファージ
マクロという名の通り、白血球の中では一番大きいです。非自己の抗原も、死んだ自己の細胞も食べます。ほかの免疫細胞への信号を出す役割もあり、こいつが暴走すると炎症が止まらなくなります。
実は進化的には最古参の細胞で、無脊椎動物のころからほぼすべての生物に存在します。好中球
ご存じ好中球。抗原を食べ、死んで膿になります。膿にならなかったものはマクロファージに食べられます。白血球の半数以上を占めるまさに免疫の主役ですが、暴走すると赤血球などを貪食し始めます。好酸球
『はたらく細胞』では槍で武装したツインテールの子として描かれる好酸球。微生物への対処を担当しますが、暴走するとアレルギーなどに繋がります。好塩基球
抗体のサブタイプの一つ、IgGに反応するレセプター(FcεRI)を多く持ち炎症発生に寄与するとされています。よくわからんやつその1
次に白血球でないもの。
樹状細胞
自然免疫から受け取ったり自分で貪食したりして得た抗原の情報を、後述する獲得免疫へつなぐ役割を持ちます。こいつがいないと獲得免疫という免疫系最大の矛が沈黙するため、重症複合免疫不全症候群(SCID; Severe Combined ImmunoDeficiency)になります*2。ナチュラルキラー細胞
『はたらく細胞』ではタンクトップにサーベルのイケイケ姉ちゃんのNK細胞。生きている細胞のうち、がん化したものやウイルスに感染したものを殺します。普段から体内を循環しており、正常な細胞たちはNK細胞に命乞いをすることで死を免れています(=殺されるやつはつまり命乞い度が足りない)。マスト細胞
ヒスタミンを放出したりしなかったりします。ヒスタミンは、抗ヒスタミン薬が抗炎症剤になっていることから分かる人もいるかもしれませんが、炎症を引き起こします。この反応は血管内皮に白血球のアンカー分子を発現させることによって血中を流れる白血球を引き留め、浸潤させます。この過程で、患部に流れ込む白血球を増やすため血管が拡張され、血管が拡張されると血漿が染み出すため腫脹や発赤、発熱などを伴います。補体
こいつはタンパク質で、細胞ではないですが、innateなのでここに入れます。
彼らの最大の役割は、抗原にくっついて食細胞を呼び、食わせることです。彼らがいないと貪食の効率がめちゃくちゃ落ちます。後述する抗体で抗原が食作用を受けやすくなるのも、補体の効果です。
獲得免疫
次に、獲得免疫について。これはリンパ球から成ります。
T細胞
胸腺(Thymus)で作られ、成熟します。サブセットがやたら多い。ヘルパーT細胞
CD4というタンパクを表面に持つT細胞で、各種シグナルを出して免疫細胞への指令を出します。暴走による不具合も、機能喪失(i.e., AIDS)や発達不全(i.e., SCID)などによる不具合もたくさん。インターフェロン(IF)のシグナルによってウイルス感染を担当するT1、抗体産生や好酸球の集中などを促しアレルギー反応を担当するT2、バクテリアや真菌など細胞外病原体を担当するT17にそれぞれ分化します。キラーT細胞
CD8を持ち、感染細胞を殺します。B細胞と並んで獲得免疫の二大巨頭の片割れとも言っていい存在。暴走例としては、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを出す組織を攻撃してしまうことによるI型糖尿病や、脳や脊髄を攻撃してしまうことによる多発性硬化症が知られています。Treg細胞
攻撃一辺倒の免疫細胞たちの中で、数少ない抑え役を担っているのが、このTreg細胞です。これがないと本当に免疫を止めてくれるやつがいなくて健康が終焉します。ナイーブT細胞
ヘルパーT細胞およびキラーT細胞の前駆体です。樹状細胞からのシグナルを受けてエフェクターT細胞に分化し、数を増やします。
B細胞
特定のタンパク質の構造に対して高い親和性で結合するタンパク質である抗体を作ります。この抗体は周囲の補体系の活性化を通した貪食の誘導や抗原の無力化によって抗原を排除できる非常に強力な武器ですが、自己を攻撃するようになると重症筋無力症やエリテマトーデスなどのマジでヤバい自己免疫疾患になります。- 抗体
B細胞によって作られるタンパク質。これの産生はDNAを切り出してきて行われますが、遺伝子の断片をいろいろと組み合わせることによってヒトの遺伝子の数2.2e4をはるかに超えた1e6通りの抗体を作ることができます。ちなみに、T細胞のレセプターも同じ仕組みで作られているため、少ない遺伝子数で多くの種類の抗原が認識できるようになっています。
- 抗体
基本動作
まず入ってきた抗原は自然免疫系の白血球たちが食べたり、攻撃することで排除を図ります。
ここで排除しきれなかった場合はマクロファージから樹状細胞へ抗原提示が行われ、抗原提示を受けて活性化した樹状細胞が、対応できる*3ナイーブT細胞やB細胞を活性化して獲得免疫を働かせます。活性化されたB細胞は抗体を産生して放出し、T細胞は感染細胞を傷害することで病原体の増殖を防ぎます。マスト細胞は放出された抗体(IgE *4 )の量に応じてヒスタミンを放出し、炎症の範囲や規模を調節します。
おわりに
免疫に関しての基本的な部分を書いたところで飽きた疲れてきたので、ここで終わります。最後に、統治行為論さんのアイコンにもなっている森久保乃々ちゃんの出演作品であるアイドルマスターシンデレラガールズ(デレマス)について書きます。
2021年11月28日、デレマスは10周年を迎え、10th anniversaryアイドルプロデュースが10周年記念イベントとして始まりました。anniversaryアイプロは毎年その年のシンデレラガールが上位報酬になるのでふみふみが報酬なのはわかっていたんですが、なんとニュージェネレーションがプロデュースアイドルに入ってしまいました。卯月がとにかくかわいい……ので皆さん今からでもデレマスを始めましょう
この記事は、統治行為論Advent Calendar 2021 3日目の記事です。